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美術録001:《ルーヴル美術館展 愛を描く》@国立新美術館

とある3月の金曜日に訪問した展覧会”ルーヴル美術館展 愛を描く”について感想を記します。
ロココを象徴する柔らかく軽やかな絵画に囲まれ、幸せなひとときを過ごしました。お気に入りの作品についていくつか書き残そうと思います。

目次

“ルーブル美術館展 愛を描く”の目玉《かんぬき》

一つ目の作品はジャン・オノレ・フラゴナール 《かんぬき》です。
フラゴナールはロココを代表するフランソワ・ブーシェに師事し、ロココの最後を飾った画家です。
このフラゴナールの《かんぬき》を目玉として、ロココの傑作が並ぶ本展覧会のテーマは、愛を描くというよりはロココ展といった雰囲気でした(笑)

それでは作品の感想について記します。
寝室で男性が女性を抱き寄せる場面を描いた本作品の魅力は、男女の関係性に対する多義的な解釈性です。やや強引に女性を抱き寄せている男性、そして男性の唇を手で制している女性…。
絵画の中の女性は嫌がっているのでしょうか、それとも男性を焦らしているのでしょうか。

私はこの男女は互いに愛し合っていると思います。
“かんぬき”に手を伸ばす2人の手は共に優しく、女性に頼まれて男性が鍵をかけている場面のように感じられたからです。かんぬきに伸ばされた二つの腕に必死さはないですよね。

画面左下の原罪を連想させる林檎は”許されざる恋”を暗示しているのか…、右下の薔薇の花が意味するものは…。
細かいモチーフがまた鑑賞者の想像を掻き立てる面白い作品です。

face, recto, avers, avant ; vue d'ensemble ; vue sans cadre © 2010 RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Stéphane Maréchalle
face, recto, avers, avant ; vue d’ensemble ; vue sans cadre © 2010 RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Stéphane Maréchalle.

ロココを代表するフランソワ・ブーシェ

ロココといえばフランソワ・ブーシェです。
大きな声では言えませんが、テーマが少し軽薄な印象がありロココが好みではありません。貴族のご機嫌取りに描かれたように感じられるのです…。これは好みの問題ですが。。笑
あまり好きではないはずなのですが、ブーシェの柔らかいタッチで描かれる天上の神話画を前に立ち止まらなかったことはありません。ロココ作品は共通して柔らかく軽い雰囲気であるのにも関わらず、ブーシェの絵はブーシェだと分かる不思議な魅力があるのです。

展覧会で紹介したいのは《プシュケとアモルの結婚》です。
登場人物が多く、物語性に溢れ、飽きずにずっと眺めていられる作品ですよね。

簡単に物語の解説をします。
プシュケは美の神ヴィーナスを嫉妬させるほど美しい人間の女性、アモル(ラテン名)はヴィーナスの息子で愛の神いわゆるキューピッド(英名)ですね。
ヴィーナスの嫉妬でプシュケを化け物と結婚させる命を受けたアモルですが、プシュケの美しさに見惚れて愛の矢で自分を傷つけ、プシュケを愛してしまいます。その愛が順調に育まれれば良いのですが、プシュケの人間的な好奇心やヴィーナスの嫉妬で波乱万丈がありました(笑)。本展覧会では、そうしたアモルとプシュケの波乱万丈を描いた作品も展示されています。

さて、本作品はそうした苦難を乗り越えようやく結ばれる場面を描いた絵画です。
作品中央左がアモル、右がプシュケです。プシュケの後ろでは納得いかない姑ヴィーナスがそっぽを向いていますね笑(その隣はアテナでしょうか)。

後ろで2人の結婚を祝福するようにアポロンの日輪馬車が駆け、右上ではゼウスが見守っているなど、ギリシャ神話界の豪華メンバーが目白押しで、眼福な作品でした。(この物語ではパンという下半身が山羊の(お笑い枠の)神様が活躍するので、登場してもいい気がしたのですが見つかりませんでしたね…。天上でも結婚式に呼ぶ呼ばない問題があるのでしょうか。)

face, recto, avers, avant ; vue d'ensemble ; vue sans cadre © 1995 RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot
face, recto, avers, avant ; vue d’ensemble ; vue sans cadre © 1995 RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot.

小さいながらもドラクロワ劇場

最後に紹介したいのがドラクロワの《アビドスの花嫁》です。
ドラクロワはロココではなくロマン主義を代表する画家で、みんな大好き《民衆を率いる自由の女神》を描いた画家です。

そして、何を隠そうドラクロワは私がルーベンスと並び大好きな画家です(ルーベンスについての紹介記事)。赤を効果的に用いて物語をドラマチックに描く画風は、画家の王ルーベンスに学び受け継いだものに違いありません。実際に師事していたわけではありませんが、ドラクロワはルーブルでルーベンスの作品を模写し絵を学んでたという記録が残っています。時代を超えて受け継がれる技術、感性にロマンを感じますよね。

大好きなドラクロワについては日を改めて書き残すとして、さっそく作品を見ていきましょう。
本作品の物語については私も詳しく知らないのですが、トルコの王朝を舞台とした作品らしく、ざっくりいうと愛し合っている異母兄妹が駆け落ちするという物語。
物語の終盤で、王に追い出され海賊となった兄(セリム)が、愛する妹(ズレイカ)を攫うのですが、王の兵に海岸まで追い詰めらてしまいます。描かれた場面はセリムの最後の抵抗の瞬間です。2人が争っているように見えるこのシーンですが、ドラクロワのこの表現は愛する男女の異なる決心を描いているように感じます。ズレイカは結ばれない運命を受け入れセリムを生かそうとし、セリムは最後の瞬間まで諦めずズレイカと共に生きる道を模索しよう、そんな決心です。小さな絵なのですが、呼吸も忘れるような切羽詰まった雰囲気が伝わります。

face, recto, avers, avant ; vue d’ensemble ; vue sans cadre © 2009 RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Franck Raux.

まとめ

ロココの作品が堪能できる楽しい展覧会でしたので、皆さんもぜひお気に入りの絵画、画家を探してみてください。以下展覧会情報です。
https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/love_louvre/

最後ですが美術館の楽しみについて少しだけ。美術館の出口では必ず作品のポストカードが販売されていますので、気に入った作品を3枚購入してみてはいかがでしょうか。額に入れて飾ったりなんてしたら、きっと素敵な空間が出来上がりますよね。

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この記事を書いた人

芸術と技術が好きなサボテンです。
自分を構成する知識や体験を少しずつ書き留めたい。

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