作品名:オペラ座の怪人
カテゴリー:切ない・ラブ
会場:劇団四季秋
2020年に観劇した《オペラ座の怪人》について記録します。切なくも美しい劇でした。
ネタバレを含みますので、まだご覧になっていない方は注意してください。
切なく虚しい愛を描いた「オペラ座の怪人」
物語はオペラ座の地下でひとり孤独に暮らすファントムの姿から始まる。
生まれ持った醜い顔により親からも見放されたファントム。彼は音楽だけを愛し、また音楽だけに愛された。
そんな彼が恋に落ちたのは、美しい歌声を持つ売れない女優、クリスティーヌ。
ファントムは、彼女を自分のものにするために音楽を与えた。劇場の主役とするために怪奇現象を引き起こした。
そして、いつしか彼はオペラ座の怪人と呼ばれるようになる。
しかし、そこまでしてもファントムの想いは届かなかった。クリスティーヌは幼なじみのラウルと愛し合うようになり、彼が与えた音楽にのせてラウルへの愛をささやいた。オペラ座の怪人はどれほどの嫉妬に身を焼かれただろうか。
叶わぬ恋に追い詰められたファントムは、憎きラウルを人質に愛を要求する。彼が求めたのはクリスティーヌのキスだった。彼女は愛する者を救うために、ファントムへのキスを決断する。しかし、その行為を通じて、彼女の愛の形、そして、それが決して手に入らぬものだということを思い知ってしまう。深い絶望と悲しみによって取り乱したファントムを残し幕は閉じる。
歪んだ形であるにしろ、間違いなくファントムはクリスティーヌを愛そうとした。道を誤った理由は、誰にも愛されたことがないが故に人を愛する方法を知らなかったから、ただそれだけのはずだ。絶望的にも、愛そうとした人と自分でない誰かの関係から、愛の形を知ることになるファントム。彼が愛を知り、それでも愛されることなく死んでいく姿は、ただただ切なく悲しい。
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